近年、経済状況の変化や消費者のニーズの多様化に伴い、食品スーパー業界の環境も大きく変わってきました。その中で、競争力を維持し、売り上げを安定的に伸ばすためには、店舗運営の戦略立案が必要不可欠です。
本記事では、スーパーマーケットにおける戦略立案に欠かせない「店舗分析」について詳しく解説していきます。
店舗分析とは何か、なぜ重要なのか、具体的な手順とは何か、そしてそれをどのように活用すれば良いのか。スーパーマーケットの分析に必要な「数と率」、AIカメラで取得するデータの運用にも触れながら、具体的かつ実践的なアイデアをご紹介します。
実店舗経営におけるデータ分析の方法を学び、ビジネスの成功に役立ててください。
スーパーマーケットの現状と店舗分析の重要性
店舗分析とは?
まずはじめに、店舗分析は、売上向上を目的に、来店者数、商品の売れ筋、レイアウトの効果など、店舗の様々な要素を調査することで、適切な経営戦略を立てるための手段です。店舗分析は、経営の見える化を実現し、経営者やスタッフが同じ目標に向かって努力できる環境を作り出します。
スーパーマーケットが抱える課題とは?
2023年に発表した株式会社帝国データバンクの「食品スーパー業界動向調査」によると、スーパーマーケットの3割が赤字であり、大手量販店や大型スーパーの「特売」や「安売り」に対抗するための地場スーパーの施策も功をなさず、電気・ガス代などの維持コストが大きく嵩み、閉店が相次いでいると言います。
一方、集客力のある地場スーパーでは、魅力的でユニークな施策やコスト削減などによって利益を増加させる取り組みを行っています。例えば、ドア付き冷凍庫・冷蔵庫の導入による「省エネ化」で光熱費を削減したり、セミセルフレジ導入による「省力化」や、商品の自動発注などの「デジタル化」で人件費の削減をし、粗利確保につなげています。
また、他店舗との違いを出しやすい惣菜コーナーを充実させるなど、セール・特売など価格競争以外の戦略で、客を惹きつけ成功しているスーパーもあります。
市場競争が激化する中、他社が真似できない独自性のあるアイデアで対抗するなど、企業独自の対策や戦略が求められています。
参照
スーパーマーケットが業績を向上させるには?
スーパーマーケット業界において、店舗の競争力を高め、売上を向上させるためには、単に商品の価格や品質に注目するだけでなく、店舗運営の全体像を把握し、改善の余地を探ることが重要となります。
特に、多店舗展開を行っている食品スーパーなどでは、各地域の特性や店舗ごとの課題を理解し、それぞれに適した戦略を立てるためにも、店舗分析が重要と言えます。
店舗分析を行うことで、消費者のニーズに対応した商品選定やサービス改善、新たなビジネスチャンスの発見など、店舗運営全体の質を向上させ、利益を最大化するための戦略を策定することが可能になります。
店舗分析の手順
ここでは、データを収集し、店舗分析を行う際の具体的なステップをご紹介します。
データ収集の方法
店舗分析を行うには、まずは分析の基礎となるデータの収集方法について理解します。
スーパーマーケットで収集するデータの内容は、大きく分けて二つあります。
一つは、店舗内での顧客の行動や購買データを収集する「内部データ」、もう一つは、顧客の属性や市場環境、競合他社の動向など、店舗外部の情報を収集する「外部データ」です。
内部データは通常、POSシステムを使って売上や購買履歴を収集します。POSデータには、購入商品、購入時間、購入金額など、顧客の購買行動に関する詳細な情報が含まれています。
また、AIカメラやセンサーを利用することで、顧客の店内行動の詳細を収集し、データ化することができます。計測ツールに搭載されたAIが、リアルタイムで入店客数をカウントしたり、顧客の動線を基に移動経路(カスタマージャーニー)を取得したり、顧客の滞在時間や、商品を検討したり手に取ったりする頻度を検知し、細かく記録していきます。
一方、外部データの収集には、公的な統計データや市場調査データを利用することが多いです。
データからは、顧客の年齢層や性別、住所地、所得などの属性情報や、市場の動向、競合他社の動きなどを把握することが可能です。
また、SNSやレビュー・口コミサイトからの情報収集も重要で、これらを分析することで顧客のニーズや評判、自社のブランドイメージなどを深く理解することができます。
上記の内部データ、外部データを収集し、必要に応じて適切に組み合わせることで、店舗分析の精度を向上させることができます。
店舗分析の流れ
次に、店舗分析のステップをご説明します。
- 目標設定:まずは明確な目標を設定します。分析の目的は何でしょうか? 売上向上? 顧客満足度の改善? それとも新規顧客の獲得でしょうか。
- 分析ツールの選択:次に、収集するデータの種類や量、目的に合わせて最適なツールを選択します。例えば、商品ごとの売れ行きを細かく知りたい場合は、販売個数を記録するPOSレジ、自店舗の主なターゲット層を知るためには来店客の属性を取得するAIカメラ、来店客一人当たりの客単価や購買率を知りたい場合は、入店人数を記録するAIカメラとPOSレジの組み合わせ、といった具合です。
- データ収集:各計測ツールからデータを収集し、分析します。このステップでは、定量的・客観的なデータの解釈と具体的な顧客のビジュアライゼーションが重要となります。
- 戦略実行:最後に、分析結果をもとに行動計画を立て、戦略の実行に移します。
上記の手順を一貫して行うことで、分析の精度が上がり、施策のPDCAを回す上で、その成果を引き出しやすくなります。また、運用結果を定期的にレビューし、必要に応じて施策を見直すことも大切です。
スーパーマーケットの分析に必要な「数と率」とは?
店舗分析には、売上高、在庫回転率、顧客満足度など、さまざまな数と率が必要です。これらの数値は、店舗のパフォーマンスを可視化し、課題を解決するための重要な指標となります。
ここでは、スーパーマーケットの店舗分析で使われる主な指標をご紹介します。
①商品の売れ筋率とその分析
売れ筋率とは、ある商品の売上が全商品の売上に占める割合を示します。売上を伸ばすためには、商品の売れ筋率は重要な指標の一つです。
最も売れている商品を把握したり、時期や季節ごとの商品の売れ筋傾向を分析することで、在庫管理や商品陳列の改善につなげることができます。
②在庫回転率とその分析
在庫回転率は、商品がどのくらいの速さで売れているかを示す指標です。
在庫回転率が高いほど、商品は早く売れ、在庫管理に費用がかからないため、高い収益性を示します。逆に、在庫回転率が低いと売れ残りや在庫コストが増え、利益率が下がる可能性があります。
在庫回転率を常にチェックし、適切な在庫管理を行うことが求められます。
③来店数とその分析
顧客の来店数は、店舗の魅力度や顧客満足度を直接反映する重要な指標です。来店数の多さは、広告効果や店舗の魅力を示すと同時に、繁盛店の証でもあります。
来店数だけでなく、一人当たりの購入金額(客単価)やリピート率なども考慮に入れることで、より深い顧客理解やスタッフのパフォーマンス改善につながり、売上向上の期待が持てます。
④顧客一人当たりの購買金額とその分析
顧客一人当たりの購買金額は「平均客単価」と呼ばれ、顧客が一度の購入でどれだけの金額を消費しているかを示す指標です。POSの売上金額の合計(総売上高)を、購入した客の数で割って算出します。
また、売上を構成する入店数・購買率・客単価のそれぞれの数値が高いほど、店舗経営が好調であると言えます。これらの数値を上げるためには、商品の価格設定、販売戦略、店舗レイアウトなど、様々な観点から分析していく必要があります。
⑤リピート率とその分析
リピート率は、顧客が再度購入する確率を示す指標です。この数値が高いほど、顧客の満足度が高く、長期的な売上向上が期待できます。
リピート率を上げる(=リピーターを増やす)ためには、商品の品質、接客サービスの質、店舗の雰囲気など、さまざまな要素を考慮しなくてはいけません。
スーパーマーケットにおける店舗分析では、これら5つの「数と率」を適切に分析することで、課題点を発見し、改善策を立てるための基盤ができます。
スーパーマーケットにおける店舗分析の成功とは
売上データの活用
スーパーマーケットをはじめ、小売業において店舗分析の効果を最大化するためには、売上データの活用が有効です。
まず、商品ごとの売上高や売上数を見ることで、どの商品が売れ筋であるのか、また時期によってどの商品がよく売れるのかというトレンドを把握することが可能です。
さらに、売上データは店舗運営における問題点を見つけるのにも役立ちます。
例えば、ある商品の売上が予想を大きく下回った場合、その原因を探ることが求められます。商品の価格設定、品質、配置場所、販売時期など、さまざまな要素が影響を及ぼしている可能性があります。
こうした分析を通じて、店舗運営の改善点を見つけ出し、具体的な対策を立てることができます。
顧客動向の把握
店舗分析を成功させるためには、顧客の動向を把握することも重要です。顧客がどのような商品を求め、どのような購買行動を取るのかを理解することで、店舗の売上向上につながります。
具体的には、顧客がスーパーを訪れる時間帯、エリアごとの滞在時間・滞在頻度、移動経路などを分析します。これらのデータから、どの時間帯に何を提供するべきか、またはどの商品を前面に出すべきかなど、販売促進のための戦略を考えることが可能になります。
商品販売戦略の立案
消費者の購買行動を観察し、どの商品がどの商品と一緒に購入されやすいかを分析することで、接客スタッフはクロスセリングの機会を増やすことができます。
店舗分析からは時系列データも得られます。これにより、季節性や曜日・時間帯による商品の売れ行きの傾向を掴むことができ、これを元にした商品販売戦略を立てることが可能になります。
さらに、アンケートなどを活用した消費者の商品評価から、市場に求められる商品の特性や価格帯を把握し、消費者のニーズに合わせた新商品開発のヒントを得ることもできます。
マーケティング戦略の立案
顧客来店数、購入パターン、商品の人気度や売上の変動などから、売上増加につながるポイントを理解し、マーケティング戦略の立案に活かします。
さらに、顧客の年齢層や性別、居住地域などのデモグラフィックデータも活用します。これらの情報を元に、ターゲットとなる顧客層に対するマーケティング手法や商品の選定、プロモーション活動を計画することができます。
例えば、サラリーマン世代によく売れる商品は、平日午前中の出勤時間帯や夕方〜夜間の帰宅時間帯を狙って店頭の前面に広告を貼って販促を強化できます。加えて、広告の実際の訴求効果は、coumeraなどのAIカメラを活用し、広告の視認回数や閲覧時間、視認率などを取得することで測定できます。
また、主に休日に家族単位での来店が多い量販店では、土日限定のポイントアップキャンペーンを開催し、購買率や客単価を上げるなどの戦略が考えられます。
さらに、SNSやレビュー・口コミサイトから得られる顧客のフィードバックを分析することも有効です。これにより、商品やサービスに対する顧客の満足度、ニーズやトレンドなどを把握し、販売促進施策やサービスの見直しに役立てることができます。
このように、店舗分析から得られる情報は多岐にわたります。それぞれのデータが持つ意味を理解し、それを企業戦略に活かすことで、店舗の業績向上に繋がります。
まとめ
本稿では、スーパーマーケットの現状について考察した上で、店舗分析の重要性について解説しました。
店舗分析を行うことで、スーパーマーケットの経営者やマネージャーは、競争の激しい業界において自店の地位を確立し、成長するための有効な手段を見出すことができるでしょう。
しかしながら、分析結果を適切に解釈し、課題を導き出すためには、定量的なデータ分析スキルに加え、市場への理解や業界経験などといった定性的な視点や、分析を助けるデータ取得ツールの導入も必要となります。
GROOOVEでは、スーパーマーケットを含め、様々な業界におけるデータの取得・分析環境構築の実績がございます。ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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