本日は、企業の売上の根幹ともいえるマーケティング戦略についてお話ししたいと思います。
マーケティングに力を入れている業種は、金融、保険、旅行、小売、情報通信など様々ですが、全体的に日本のマーケティングへの投資比率は、アメリカなどの諸外国に比べて低いのが現状です。
本稿では、主に小売店舗を経営するマーケティング担当者が、企業の戦略を立案・実行する際のポイントや、AIカメラを用いたマーケティング戦略の評価方法ついて、成功事例とともにご紹介します。
マーケティング戦略とは何か?
マーケティング戦略とは、市場のニーズ、ターゲット顧客の購買行動、競合他社、自社が直面している課題や状況などを分析し、どのように顧客にアプローチしていくかを考えて立案する計画のことです。
具体的には、自社の商品やサービスを、誰に、どのような価格で、どのような価値で提供するかを決めることを指します。
マーケティング戦略が綿密に練られていれば、実施後の効果も期待できます。
マーケティング戦略の重要性
どんなに魅力的な商品やサービスを生み出しても、それを販売するための戦略的基盤が整っていなければ、チャンスを逃し、安定した収益を上げることはできません。
他社にあって自社にないものは何でしょうか? 自社の製品やサービスでしか提供できない価値は何でしょうか? 売上目標数字を達成するために、マーケティングへ費やす予算をどのように見積もるべきでしょうか?
マーケティング戦略を実施した後も、定期的に効果測定を行い、どの戦略が実際に有効であったかを把握することが重要です。
分析結果をもとに、顧客に対して適切なアプローチを行うことで、さらなる売上につなげることができます。
マーケティング予算を計画する
予算を計画する際は、まず、売上達成目標=KGI(Key Goal Indicator)を設定し、目標達成のためにマーケティング戦略をどのように役立てていくかを検討します。
売上達成目標に基づき、マーケティング施策の予算を配分します。業種によって異なりますが、一般的にマーケティング費は総予算の5〜10%程度です。
予算計画の流れ
例えば、来期(12ヶ月以内)に売上目標2億円を達成したいとします。マーケティング予算はどのように見積もればよいでしょうか。
- 次年度の店舗の売上目標を設定する。
- 本年度の売上実績を評価する。
- 本年度に成功した戦略は継続し、失敗した戦略は運営段階で不備や漏れがない限り廃止する。また、次年度の目標数値に応じて次の戦略を検討する。
- 市場動向や同業他社(競合)のマーケティング予算なども参考にし、各戦略の予算を設定する。
小売店におけるマーケティング戦略例
訴求力のあるマーケティング活動によって店舗の売上を向上させるためには、どのような戦略を立案し、運用すべきなのでしょうか。
ここでは、小売業におけるマーケティング戦略の一例をご紹介します。
都市部の一等地に店舗を構える小売業
ミドル~ハイブランドを中心に扱う同社の売上の大半は、単価の高い商品を購入する顧客のリピート購買によって生み出されている。再購入を促すマーケティング活動に注力することで、さらにリピーターを増やしたい。
【施策案1】店頭に自社アプリの会員登録を勧めるPOPを設置し、レジでのお会計時にも顧客にダウンロードを促す。登録後、メンバー限定の優待クーポンを配布し、再購入や再来店を促すことで、リピーターの獲得が見込めるのではないか。
【施策案2】VIP顧客に対する既存のサービス体制を見直し、高級皮革製品の“生涯メンテナンス”を提供してみてはどうか。
無期限の修理付きで、購入後も末永くお付き合いできる「安心と信頼」を価値として上乗せすることができれば、満足度が向上し、顧客の囲い込みにつながるのでは。
コラム:既存顧客が小売店にもたらすメリットとは?
業界によって異なりますが、アパレルブランドを始めとする小売業におけるリピーター(アクティブ顧客)と新規顧客の理想的な比率は、7~8対2~3程度と言われています。その理由は、顧客一人当たりのコストや収益率にあります。
新規顧客を獲得するためには、広告宣伝費に多額の費用がかかり、一般的に収益率は低いのが特徴です。一方、リピーター顧客はすでに自社の商品に慣れ親しんでいるため、販促費をあまりかけなくても売上に貢献する可能性が高くなります。
リピーターをいかに獲得し維持するかが、小売業の成長と売上安定のカギを握っているとも言えるでしょう。
店舗測定ツールを活用したマーケティング施策の運用
ここからもう少し踏み込んで、マーケティング戦略策定後の運用効果を実店舗で計測する方法について考えてみます。
店舗計測ツールを導入することで、マーケティング活動の運用状況や効果検証が可能になります。
AIカメラを活用したマーケティング施策の効果測定
店舗計測ツールの代表格、AIカメラを店舗に設置することで、マーケティング施策の効果測定が容易になります。
例えば、客数や顧客の移動経路、行動(興味・関心)、属性など、精度の高いデータをリアルタイムで取得できるため、正確な数値をもとに、マーケティング活動を成功に導くための知見やインサイトを得ることができます。
(1)入店率と入店人数で集客効果を検証する
新商品やキャンペーンなどの広告が、潜在顧客にどの程度訴求し、顧客化できているかを、入店率や来店した客数の変化から検証します。
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(2)AIカメラとPOSレジのデータから、販促の効果を測定する
AIカメラで取得する入店人数とPOSレジの購買データを連携させ、プロモーション施策の実施前後で、購買率や客単価が上昇したかどうかを分析します。
例えば、「季節限定セール」や「通常商品を2点以上購入のお客様はポイント5倍アップ」などの販促施策を実施後、購入に至った客の比率が高まっていたり、平均客単価が上がっていれば、その施策が効果的であったことがわかります。
関連ブログ:
- 人流データxPOSデータ
- なぜAIカメラのデータとPOSレジのデータを掛け合わせる必要があるのか?
- 本部の施策 - セールスプロモーション
- 《RetailNext最新機能》個別入店・グループ入店カウントで、購買率を劇的に改善!
(3)ターゲット顧客の来店状況を確認する
実際に来店した顧客の属性(性別・年齢層)や新規・リピーターの割合などから、あらかじめターゲットに設定していた顧客層へのアプローチができているかどうかを判断することができます。
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(4)エントランスや店内のVMD効果を検証する
AIカメラを複数設置することで、店舗入口のディスプレイだけでなく、店内全域の広告や商品の視認性(顧客の反応率)、各販売エリアに対する興味関心度などを測定することができます。
例えば、什器や看板(サイネージ、POP広告)、商品の陳列の仕方などが、顧客の行動にどのような影響を与えるかを検証します。
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- 来店客の立ち寄り順序や、各場所で要した時間を調べる
- 場所ごとに来店客の興味関心度を数値化する
- 入口からの客の移動方向を確認する「方向マップ」とは?
- 本部の施策 - VMD(ビジュアル・マーチャンダイザー)
AIカメラを導入した小売店のケーススタディ
ここでは、AIカメラが実際にマーケティング戦略の立案や施策運用にどのような効果をもたらすのか、小売店における事例をもとにご紹介します。
事例1:美容・家電販売店における顧客属性と入店人数の取得
化粧品や日用家電を主に取り扱う当店舗では、30〜40代の男性客向けに最新のシェーバー(髭剃り器)の替え刃を販売していました。
該当商品の売れ行きは好調でしたが、店舗で販売する商品全体の販売数を増加させたく、AIカメラで入店人数と顧客属性を取得しました。
入店カウントと属性データから、日中は25〜35歳の女性客が多く来店し、替え刃を他の商品と合わせて購入し、最も売上に貢献していることが明らかになりました。また、曜日ごとのピーク時間を見込めるようになり、売上が見込める時間帯に合わせてスタッフの稼働人数を最適化しました。
上記の属性に訴求する商品を多く取り扱ったり、来店状況に応じて在庫数や接客スタッフ数を調整できるようになりました。その結果、顧客の「ついで買い」が増加して購買数が上昇し、店舗の売上向上に貢献しました。
事例2:家具・インテリア雑貨販売店の入店人数と購買率・客単価の取得
消費者の買い物嗜好がオンラインに傾く一方で、多くのリアル店舗は売上不振に陥っており、一部の百貨店やアパレル・ブランドは閉店に追い込まれています。
あるインテリア・雑貨店でも同様に、過去2年間の売上がふるわず、頭を悩ませていました。
しかし、ショップの業績を評価する基準が売上データしかなかったため、AIカメラを導入し、要因を探っていくことにしました。
今回の取り組みとして、まずはAIカメラやPOSレジ、自社サイトなどから取得したデータをヒントに、顧客の購買行動の各ステップ(1. 認知、2. 興味、3. 来店、4. 購入、5. リピート購入)のどこに課題があるかを分析しました。
店頭のAIカメラで取得したデータには、店舗前の通行量、入店率、来店客数、平均客単価、購入率などが含まれ、数値結果から、購入率は30%近くを維持できているものの、入店率自体が低く、入店人数も安定して確保できていないことが判明しました。
そこで、オンラインでは来店を促す販促活動を取り入れ、店頭でもエントランスのディスプレイ改善や客数の推移に応じて積極的に呼び込みを行い、顧客の入店促進に努めました。
1年間ほどデータに基づいた施策運用をくり返し行った結果、客数を安定して確保できるようになりました。また、店内のスタッフ配置をピーク時間に合わせて最適化した結果、接客漏れによる機会損失が低減され、購買率と客単価が上昇しました。
今後はリピーターを増やす施策にも力を入れ、動線分析や接客パフォーマンス分析などを取り入れていきたいと考えています。
まとめ
どんなに魅力的な商品やサービスであっても、ビジネスの土台となる企業の戦略や店舗分析環境が整っていなければ、チャンスを逃し、安定した利益を継続的に生み出すことはできません。
AIカメラを用いて店舗分析を行い、マーケティング戦略を立案・実行・改善することで、利益の最大化を図ることができます。
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